病院内部に属する勤務医の事情~医療界の出世に関する変化~|ドクターズアイ.com

勤務医が出世するうえで重要なこととは?

現役医師の皆様のお役に立つ情報を提供する「ドクターズアイ.com」が、“病院内部に属する勤務医の事情”についてのシリーズコラムをお届けします。第4回は勤務医の出世を題材としたコラムです。大学病院・一般病院と病院の種類を問わず、勤務医にも一般の社会人と同様に“出世”が存在します。医局は縦社会であり医療業界では出世するのも一苦労な印象がありますが、最近ではその仕組みに関しても少なくない変化が起きているようです。

 

実力とは比例しない従来の年功序列の出世システム

大学病院などの研究室や診療科ごとに組織立ったグループである医局は、病院内で強い権威と影響力を持っています。そのため、医局という組織の中で働く勤務医は、出世するうえでの立ち回りの仕方を覚えることが不可欠でした。研修医が初期研修を終えて医局に入ると、その後は大学病院内での出世の階段を登り始めることになります。順調にいけば大学病院の勤務医、講師、准教授、教授、病院長とステップアップしていくのがよくある出世コースです。

基本的には年功序列ですが、特に大学病院など規模が大きい場合は、順調に出世できるのはほんのひと握りに過ぎません。しかも出世に必要なのが医師としての実力だけではないことがまた、悩ましいところです。医師としての才覚よりも、医学研究をして論文を書き、それを教授たちがとりまとめる教授会で認められることの方が重要となります。

そのため大学病院内で出世しようと思ったら、医師としての実力を磨くよりも研究に精を出すことや教授会に取り入る政治力を身につけることが優先されます。これは一見すると医学の本質に反することのように思えますが、医局内では当然のことでした。しかし、2004年に臨床研修医制度が発足したことにより、この風潮が変わりつつあります。

 

臨床研修医制度によって変わりつつある医者の評価

2004年に新たな臨床研修医制度の発足により、研修医が「臨床研修指定病院」の中から希望の病院を選んで試験を受けることが可能となりました。以前は教授の一存によって医師個人の意向を無視した採用、希望していない病院への配属や理不尽な配置転換などが行われることも珍しくはありませんでした。その大学病院内で出世するためには教授会に取り入る政治力が必要だと上述したのは、そういった不本意な人事を避けるために不可欠な要素だからです。

しかし、研修医自らの意思で希望の病院を選んで試験を受けられるようになってからは、そういった傾向も少しずつ減りつつあります。自分の意思で希望の病院を選べることから、大学病院内での出世だけがキャリアパスではなくなったからです。この変化により、医師の評価は医学研究や論文といったものから現場での技術といった実力主義に変わりつつあります。

その傾向として、近年では海外で実績や臨床経験を積んだ医師たちを積極的に受け入れる民間病院も増えています。もちろん医療界の将来を考えるうえでは研究は必要不可欠ですが、腕のいい医師が正当に評価されるという土壌も同様に大切だと言えるでしょう。このように新臨床研修医制度の発足は、医療界の出世に新たな風を吹き込んだのです。

 

ヒエラルキーの上位を狙うには“欲”が重要

今までの医療業界の出世の常識は、個人医として開業する以外は勤務している大学病院系列のレールに乗ることでした。しかし、実績重視の風潮に傾きかけているだけに、勤務医として働き続けるにしても、しっかりとした“志”を持つことが大切です。それは一人の医師としての技量をとことん極めることなのか、それとも組織のトップに立って業界全体に影響を及ぼすことなのかによって力を入れるべき分野が異なります。

もし医局内のヒエラルキーのトップを狙うのであれば、従来通りに教授会で認められることが先決です。そのためには、医師として働きつつ、論文のための研究にも時間を費やさなければならず、並々ならぬ努力が必要になります。病院の頂きに登り詰めるためには、“出世欲”とも表現できるほどの強い信念を持っていなければ成し遂げられないでしょう。ある意味一人の医師を極める選択肢を捨て、研究分野を極めることが重要になるだけに、人一倍の上に立ちたいという野心が不可欠なのです。

医療業界の中で、医局内で出世することだけがすべてではないという風潮が高まっていますが、現場のエキスパートを狙うにも、組織のトップを狙うにもそこに到達するための努力が欠かせないことは変わりありません。どの方向性を選んでもその道を極めるには鍛錬は必要です。ただ、従来の閉鎖的だった業界に“改革のメス”が入り始めたことは、日本の医療においてプラスに作用していくことでしょう。