【開業医シリーズ】開業医の経営者としての悩み~重要となる開業する時期~|ドクターズアイ.com
医院を開業するのに最適な時期とは
現役医師の皆様のお役に立つ情報を提供する「ドクターズアイ.com」が、“開業医の経営者としての悩み”についてのシリーズコラムをお届けします。第1回は開業する時期を題材にしたコラムです。開業医は一人の医師でありつつ、クリニック全体をマネジメントする一人の経営者でもあります。医師とは別の手腕が求められるだけに、開業のタイミングの見極めはその後の経営を見据えるうえで、非常に重要な決断となります。
雇われる側でいるか、雇う側に回るかの重要な決断
ある程度の勤務実績を積んだ医師が、今後のキャリアパスを考えるうえでいくつかの選択肢があります。それは主に所属する病院内での昇進・昇格、他院への転職、独立して開業の3つです。医局に留まり大きな組織を動かす存在を目指す人、よりよい労働条件を求めて新たな職場を探す人、院長として自身の医院を経営する人など、医師として歩んでいく道は人それぞれだと言えるでしょう。
ただ、上記の3つのパターンの中で「開業」に関しては他の2つのパターンとは大きく異なります。それは“雇われる側のままでいるか”、“雇う側に回るか”の違いです。一般企業でいうと、“社員として働くか”、“社長になるか”の違いであり、働き方が大きく変わることを意味します。つまり開業するのであれば、それは人生における一大転機と言っても過言ではないのです。
開業医に求められるのは、医師としての能力だけではありません。腕前やキャリアは十分だったとしても、経営者としても考え方やマネジメントができないと成功をつかむことはできないでしょう。その点をあまり考慮せずに開業する方もいるようですが、数年で廃業に追い込まれるケースも多いようです。“医師としては優等生”でも“経営者としては劣等生”という開業医も実は少なくありません。
開業のベストタイミングは40代前半を過ぎた頃
開業して自身の医院を持つのであれば、マネジメント感覚があることが大前提です。勤務医は所属する医院の就業規則守り、与えられた仕事こなすことで評価されますが、開業医に必要な要素はそれだけではありません。資金計画作成、融資交渉、税金対策、スタッフの採用や教育など医院の運営に関わるマネジメント業務をこなす必要があるのです。
医師としての役割を果たしつつ、医院の経営の実権を握るということは想像以上に労力を要します。そして、経営を軌道に乗せるのにはある程度の時間が必要となります。そのため、「貯蓄ができて、生活に余裕ができてから開業しよう」など悠長に考えていたら、“ベストなタイミング”を逃してしまいかねません。では、具体的にいつ頃が“ベストなタイミング”なのでしょうか?
それは医師として脂が乗っている時期と言われる30代後半から40代に差しかかった頃、つまり自身の価値のピークが下降線に傾きかける40代前半がベストとなります。なぜなら、その後は医局に留まるとしてもある程度の出世街道が決まっており、50代が近くなると転職するにしても選択肢が限られてくるからです。40代前半までに資金面などの準備を進め、医師としてさまざまな経験を積み、社会人としても成熟した段階で満を持して開業する――というのが雇う側に転向する理想のプランと言えるでしょう。
高齢になってから経営に携わることのリスクとは
50代、60代で開業しても失敗するというわけではありませんが、40代で独立するよりもさまざまなリスクを伴うことは確かです。上記でも触れたように開業医はマネジメントの能力が求められるだけに、早くから経営視点の考え方を取り入れることが成功の近道となるでしょう。
勤務医として真面目に40年近く働き、その後にいきなり経営を司る開業医になったとしたら、若いうちから経営の実権を握っている開業医よりも経験値はかなり劣ります。60代でもその遅れ分を取り戻す気力や体力があるかというと疑問符がつくでしょう。
もちろん人によっては高齢で開業しても成功する方はいますが、莫大な費用がかかり、融資条件も厳しくなるだけに失敗する可能性をかぎりなく0に近づけるべきなのです。開業の成功率を高めるには、若いうちから貯蓄や資産運用をして資金面の入念な準備を進めつつ、“40代前半という最適なタイミング”を待つというのがベターな選択だと言えます。