【開業医企画】開業医が勤務医よりも儲かると言われる所以とは|ドクターズアイ.com

開業医は勤務医よりもラクに稼げるのか?

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現役医師の皆様のお役に立つ情報を提供する「ドクターズアイ.com」が、開業医に関連したトピックスをコラム形式でお届けします。今回は開業医の給与事情を題材にしたコラムです。厚生労働省によって発表された平成25年度の医療経済実態調査報告によると、勤務医の平均年収が約1400万円に対し、開業医の平均年収は約2500万円と約1.8倍の収入を得ています。単純に数字だけで見れば開業医の方が稼げると言えますが、実際のところはどうなのでしょうか?

 

収入が多い開業医もラクして稼いでいるワケではない

高収入で社会的なステータスも高い医師という職業――その中でも自ら経営の手綱を引くことができる開業医は、世間から「お金持ち」「エリート」と羨望の眼差しを集める存在と言えるでしょう。実際にサラリーマンの平均年収が415万円(国税庁民間給与実態統計調査:平成26年度分より)であるのに比べ、勤務医の平均年収が1479万円。開業医に至っては平均年収が2500万円にものぼります。

金額で見ると圧倒的に稼いでいる開業医ですが、忘れてはいけないことは“経営者”であるということです。つまり一般企業でいうと社長であり、医院の運営とスタッフへの給与支払いの責任を持たなければなりません。勤務医を経て開業した医師は、元々病院側から守られる立場でした。しかし、いざ開業医になると状況は一転。自らがスタッフを守らなければならない立場になり、経営において常に気の抜けない状況に陥ります。

さらに開業には膨大な費用がかかるため、ほとんどの方が融資を利用することになります。開業直後は借入金の返済に追われるので、手元に残る額は勤務医時代よりも少なくなるかもしれません。このように医院経営には常にさまざまなリスクが付きまとうので、決してラクして稼げるわけではないのです。

 

経営に失敗すると巨額の負債を抱えるリスクも

勤務医が開業する場合、特に気をつけるべきことは“身の丈に合った経営”をすることです。勤務医時代に様々なしがらみに囚われていた影響から、「開業後は自分の思いのまま運営をしていきたい」と悠々自適な経営を行うことを望む方も多いそうですが、きちんとしたビジョンを持って経営しないと必ず痛い目に遭います。

特に注意すべきが無謀な投資です。開業して経営者になると、自らが医院の責任を持ちます。決裁権が自分にあるだけに他人に聞く耳を持たず、独りよがりで現実離れした経営をしがちになるそうです。たとえば、アクセスもさほど良くなく、人口があまり多くない田舎に巨大なクリニックを建設したとしましょう。周囲からはご立派な病院ができて喜ばれるかもしれませんが、維持費をまかなうことができるだけの集客は到底見込めませんよね。

一般企業と同じく、トップが経営の手腕を発揮しないとたちまち経営難に陥ってしまうのが開業医の宿命です。医師という職業は信頼性が高いため、金融機関も初期は積極的にお金を貸してくれるようですが、経営に失敗して負債が膨らむようなことがあると融資が打ち切られる事態にまで発展しかねません。そうなると、稼げるどころか借金まみれになってしまいます。開業医はそんなリスクも抱えているのです。

 

成否を分けるのはマネジメント能力

開業医は医師でありつつ、一人の経営者です。そのため医師としての能力はもちろんのこと、医院全体を見渡し、最適な経営をしていくためのマネジメント能力が求められます。では医院をマネジメントで成功に導くためには、具体的にどのような資質が必要なのでしょうか。主に以下の5つが挙げられます。

【開業医として成功するための資質】

  1. 患者・スタッフと良好な信頼関係を築けるコミュニケーションスキル
  2. 医院のある地域の特性や患者のニーズを汲み取る力
  3. 医師視点ではなく経営視点で考えたビジョンの有無
  4. 新しいことや他人の意見を積極的に取り入れる柔軟性
  5. 経営企画や財務などの医院全体の収支に関する視点

上記のように、開業医として成功するための資質は、一朝一夕に手に入れられるものではありません。つまり、独立して開業医になったからといってすぐに稼げるわけではなく、医院経営を軌道に乗せてはじめて安定した収入が得られるのです。安直に開業医の方が稼げるからと、周到な準備もなく開業しようとすると失敗に終わる可能性が高まります。開業医として成功することはそんなに容易いことではないのです。