【勤務医シリーズ】病院内部に属する勤務医の事情~重要となる健康管理~|ドクターズアイ.com
勤務医にとって大切な健康管理
現役医師の皆様のお役に立つ情報を提供する「ドクターズアイ.com」が、“病院内部に属する勤務医の事情”についてのシリーズコラムをお届けします。第1回は勤務医の健康管理を題材にしたコラムです。人々の健康や命を守る医師の仕事はかなり激務だと言えます。昼夜問わずに働くことも珍しくなく、不規則な生活リズムでも働ける体力を身につける必要があります。医師の方々の健康管理の実情に迫ります。
激務ゆえに健康に不安を抱える医師も多数
人々の健康と命を守るという、社会的にも高貴な職業である医師。世間一般の評判も高く、華々しい印象が先行しがちですが、その実態は肉体労働に近しいものがあります。「体調を崩した」「ケガをした」「高熱が出た」などの理由で、日々多くの人々が時間帯を問わず病院に足を運びます。その一人ひとりをしっかりと診断し、改善に導くことが任務だけに現場は非常に過酷だと言えるでしょう。
開業医であれば診察時間を自身の意向で設定できますが、勤務医に関してはそうではありません。就業規則で決められたルールに基づき働く必要があり、さらに患者の予定に合わせて残業することもざらにあります。夜勤対応もあり生活リズムも狂いやすいので、体調管理は至難の業です。「医者の不養生」という言葉通り、自身の健康と向き合うのも1つの課題と言えます。
労働政策研究・研修機構の平成23年のデータによると1週間当たりの勤務医の平均勤務時間は53.2時間。一般的に1週間に60時間以上の労働を行うと過労死の危険が高まると言われていることから、勤務医は平均の労働時間が相当に高いことがわかります。「医師は激務」ということは数字でも実証されており、現に不規則な勤務ゆえに充分な睡眠時間を確保できないなど、健康に不安を抱える医師が多数存在するのです。
医師だからこそ知る健康法など存在しない
労働環境が心配されている勤務医ですが、一般の方の視点からすると、人々の健康や命を守ることを生業としているだけに「独自の健康法があるのでは?」と考える方もいるかもしれません。ただ、結論から言えば医師だからこそ知る特別な健康法などはありません。患者を健康にすることが仕事である医師がためになる健康法を隠しておく必要などないからです。
しかし、医師ならではの知識を生かして健康に気を遣うことはできます。たとえば、偏頭痛がある場合、一般の方なら「頭が痛いから少し休もう」程度にしか思わないかもしれません。一方で医師の場合は脳梗塞の可能性を心配し、すぐに検査することも可能です。そして勤務医であれば、院内の他のドクターに診てもらうこともできます。自分の病気の予兆に対してその深刻さを的確に判断し、対応できる点は医師であることの特権と言えるでしょう。
また、医師の職場である病院はさまざまな細菌と触れる機会が多い場所です。そのため、自然と手洗い・うがいやマスクの装着が徹底されています。普段から病気に向き合うことに慣れているため、いちいち恐れることもせずに予防に意識を傾けることができます。病気の患者と常に接していながらも気にすることなく業務を遂行できるのは、そうした知識や意識によるところが大きいのではないでしょうか。
体力の衰えを感じたら転職・独立も視野に
ただ、いくら人々の健康や命のためとはいえ、たとえば50歳を過ぎても勤務医として朝も夜も関係なく働き続けることは困難だと言えます。体力のある若いうちはまだいいものの、年を取ると同じ勤務体系では無理が生じることは容易に想像がつきます。いくら健康管理に努めたとしても忙しい勤務医には劇的な体力の向上は見込めないだけに、いっそのこと環境を変えることは一つの手だといえるでしょう。
- 勤務時間が日中だけで残業の少ない医院へ転職する
- 自分自身で医院全体を管理できる開業医を目指す
- 専門領域を学び研究側の立場になる
など病院に勤務し続ける以外にも選択肢は複数あります。もしお勤めの医院の勤務体系が厳しいようでしたら、肉体的負担が少ない病院への転職をしたり、自分で開業したりするのも視野に入れるべきでしょう。
勤務医は一人の医者である前に、一人の人間です。激務続きで健康に気を遣ったライフスタイルを過ごせていない場合は、環境を変えることで“人間らしい生活”を手に入れることもまた、1つの選択と言えるでしょう。転職や独立をするうえで最低条件となるのは、一人前の医師であること――どこの病院でも、自分一人だけでやっていける自信があるならば、自分の身体を労る意味でも、負担が少ない環境に身を置くのも本人の自由なのです。