【開業医シリーズ】開業医の経営者としての悩み~スタッフ採用の難しさ~|ドクターズアイ.com
医院経営において重要となるスタッフ採用
現役医師の皆様のお役に立つ情報を提供する「ドクターズアイ.com」が、“開業医の経営者としての悩み”についてのシリーズコラムをお届けします。第2回はスタッフ採用の難しさを題材にしたコラムです。開業医として独立したからといって、院内の業務をすべて一人で担うわけではありません。受付や医療事務、看護師、助手ら多くのスタッフの協力があってはじめて医院運営が行えるだけに、優秀なスタッフの雇用が重要になります。開業医のスタッフ採用における注意点、理想の人材を確保するためのポイントはどこにあるのでしょうか。
医院の運営はスタッフの協力が不可欠
開業医として医院経営を行っていくうえで、多くの方が苦労するのがスタッフ採用です。質の高い医療を提供するためにはそれぞれの業務にプロフェッショナルな人材が必要となります。そして、医療界で“チーム医療”という言葉が盛んに使用されているように、メンバー間で密な連携を取ることが不可欠なのです。そのため、いずれかのポジションで人材難に陥ってしまうと、医院経営に支障を来すこともあります。
また、それぞれの分野のスペシャリストが集う総合病院とは異なり、規模の小さい開業医ではさまざまな業務をこなすことができるユーティリティプレイヤーが求められます。医師、看護師、医療事務、助手らがそれぞれの職務の域を越え、雑務なども率先して行う気概がないと成り立たないのが開業医です。そういった意味でも、開業医は運営を行ううえでスタッフ全員の協力体制を築くことが肝となります。スタッフ採用の際には、検討している人材が自分や既存スタッフと馬が合うかをしっかりと見極めるようにしましょう。
医院経営に限った話ではありませんが、“優秀な人材”は限られており、常に引く手あまたな状況です。特に医療関係は人材不足が顕著であり、各医療機関で優秀な人材の奪い合いになることも珍しくありません。競合となる病院への人材流出を避けるためにも、地域の病院における待遇面の相場は最低限、把握しておく必要があります。さらにそのうえで、自身が経営する医院で働くことのメリットも併せて提示できれば理想的だと言えるでしょう。
想像以上に多い採用におけるミスマッチ
優秀な人材を確保できるか否かは医院経営において死活問題だと言えますが、採用で失敗した経験のある病院経営者の方は少なくないようです。理想の人物像と応募者のニーズをマッチさせる必要がありますが、採用時にミスマッチが起こる要因は決して1つではありません。
たとえば、前述したように開業医ではスペシャリストよりもユーティリティプレイヤーが求められます。特に常勤で働くスタッフの場合、自分の得意分野以外の業務は関わらないという姿勢では、他のスタッフとの軋轢を生むことにもつながりかねません。総合病院と同様に専門領域での仕事を望む人材を募集していたとしたら、募集要項を変更する必要があるでしょう。
また、高い給与を払うことで優秀な人材を確保しようと考えていても、応募者側は育児などを踏まえ、有給休暇の取りやすさや短時間労働といった労働環境の充実を求めているかもしれません。こういったミスマッチは、採用の選考段階でお互いの意思の確認が不十分なときに起こりやすいと言われています。そのため、面接の時点で相互理解を深め、両者が十分に納得したうえで契約を結ぶことが重要です。
理想の人材を確保するために必要なこと
優秀でなおかつ、理想とする人材を確保するには、給与や労働時間も含めた待遇の充実ももちろんですが、それと同時に医院の方針、経営者の理念、スタッフに求めるものを明確に示したうえで、選考の際に口頭でもしっかり伝え理解してもらうということが大切です。また、応募者の希望や考え方を理解することで採用前にミスマッチを認識し、採用後に痛手を負うことがないようにしましょう。
ただ、医療界は慢性的な人材不足に陥っていることも確かなので、理想とする人材を追い求めるばかりではなく、“一種の妥協案”も常に考えておくべきです。たとえば、看護師を応募している方が限られた日数、時間しか働けないとしても、子どもの成長に伴い長時間勤務が可能になるかもしれません。クリニックや医院では専門分野に特化したスペシャリストを活用しづらいとは言われていますが、非常勤など柔軟な働き方を提供することで、持てるポテンシャルを最大限に引き出すことも可能でしょう。
理想はあくまでも理想であり、現実の間に大きなギャップが生じてしまうことも珍しくありません。そのため、数少ない優秀な人材を確保するためには、時には“雇用の柔軟性”を示すことも大切と言えます。ただ、それは単に特例を認めるということではありません。お互いの求めるものを理解しあったうえで、納得できる働き方を見出してあげること――それこそがスタッフの採用においてもっとも大切なことではないでしょうか。最後にミスマッチを防ぐためのチェックリストをご用意したので、採用があまりうまくいっていない病院経営者の方は、ぜひチェックしてみてください。
【採用のミスマッチを防ぐためのチェックリスト】 □募集要項に医院の方針や理念を記載しているか □面接時に口頭で医院の方針や理念をしっかり伝えているか □同じ地域にある他の医院の待遇面の相場を把握しているか □理想の人物像と応募者のニーズにズレが生じていないか □スペシャリストかユーティリティな人材かの見分けができているか □応募者に魅力を感じてもらえる労働環境を提供できているか |