【勤務医シリーズ】病院内部に属する勤務医の事情~医局内の人間関係・派閥~|ドクターズアイ.com
何かと多い医局での人間関係の悩み
現役医師の皆様のお役に立つ情報を提供する「ドクターズアイ.com」が、“病院内部に属する勤務医の事情”についてのシリーズコラムをお届けします。第2回は医局内の人間関係・派閥を題材にしたコラムです。勤務医として働くうえで切り離せないのが、医局や派閥といった類の人間関係。病院内で上手く人間関係を構築できなかったがゆえに、転職を決意する人も少なくないようです。“さまざまなしがらみ”の中で働く勤務医の実情に迫りました。
明確に存在する医局内のヒエラルキー
医局に所属する勤務医は、開業医とは異なるしがらみに頭を悩ませているケースが多いと言えます。特に国公立、私立を問わず大学病院では医学部時代から続く“医局人事”の影響を受け続けることになります。それは“一種の宿命”であり、医局という組織に所属するうえでは逃れることはできないのです。
そして、医局内には絶対的な上下関係があり、序列を示す明確なヒエラルキーが存在します。人によっては、医師の仕事そのものよりも人間関係に起因するストレスが疲弊する原因となっている場合もあります。ただ、将来を考えるとヒエラルキーを重んじてうまく立ち回ることは、医局人事で好待遇を得るための処世術でもあるだけに、熾烈な出世争いを勝ち抜くためにも本来の医師の仕事に加えて、人間関係にも最大限に気を配る必要があるのです。
明確な序列が存在することはマイナスイメージが先行しがちですが、医局に身を置くことはデメリットばかりではありません。たとえば、病院の後ろ盾という安心できる就労環境がある点は開業医にはないメリットです。出身大学や派閥に影響されない開業医は一見すると自由に映りますが、後ろ盾がない分、浮き沈みも激しく経営の苦労も絶えません。また、大学病院では系列病院や提携病院に派遣医師として出向する際などに、派閥の恩恵を受けるか否かで収入に大きな差が出ると言われています。
依然として変わらない派閥による医局人事
特に大学病院の医局に見られる絶対的な上下関係は、非常に閉鎖的で封建的です。そのため、常に上の人の顔色を伺いながら仕事をしているという勤務医の方は多いのではないでしょうか。医局のヒエラルキーを分類すると、頂点に立つのはもちろん教授です。その下に准教授、講師、助教、医局員、大学院生(博士課程生)、専門研修医(インターン)と続きます。医局に留まって出世はもちろん、学位取得を目指すのであれば、トップの教授は当然のこと、序列の上の人には忠実に従った方が無難と言えるでしょう。
序列の上の方に行くためには、専門研修医、大学院生、局員として順当に専門領域を学び、実績を積み上げることで教員(教授、准教授、講師、助教)の第一歩である助教まで到達します。大学病院にずっと留まって勤務したとしても教員までの道のりは長く険しいものがあります。だからこそ、今後のキャリアを考えるうえでは上位層との人間関係を大切にしつつ、医局内でコツコトと成果をあげ続けることが重要なのです。
また、系列病院や提携病院に派遣医師として出向した場合では、その病院の“派閥”を意識する必要があります。派閥の枠組みは学閥に通じる面があり、同じ大学出身者・医局出身者を重要視するのが一般的です。厚生労働省が2004年に導入した「医師臨床研修制度(※)」によって、インターンの一般公募が行われるようになりましたが、ヒエラルキーの上層部では依然として派閥による医局人事が継承されています。そのため、“医局の息がかかるポジション”にいる限りは、人間関係を無碍にすることなどできないのです。
※医師臨床研修制度:出身大学以外でも臨床研修病院の指定を受けた病院で研修を受けられる制度
図:医局におけるヒエラルキー
転職はしがらみから解放される1つの手段
上述したような医局や派閥による人間関係に疲弊した医師の中には、転職を希望する方が増えています。転職はそうしたしがらみから解放される1つの手段であり、医師としての方向性を定める分岐点となり得るのです。専門性の高い研究を続けたい場合は研究費用や設備が必要となるため、一般病院に求めるのは難しいかもしれません。
大学病院や国立病院などの大きな系列病院と異なり、一般病院のメリットとしては経験可能な症例数が多いことが挙げられます。転職が実現できると、多くの臨床経験を積んで、医師の仕事に付加価値を付ける機会が得られます。一方でヒエラルキーが根強く存在する大学病院の医局の中では、上層部から依頼された雑務を断ることはほぼ不可能であり、インターンの教育に使う時間も多く、自分自身のスキルアップに時間を割くことは難しいでしょう。
「組織に属して専門領域で自身を高めたいのか」「自身の求める医療を自ら見出していくのか」を自問自答するうえでも、転職という選択肢を考えておくべきです。人間関係のしがらみから解放された環境で医師のスキルを高めて自らの力で好待遇を手に入れることも医師として1つのあり方であり、医局内での出世争いに勝ち抜いて収入や地位を手に入れるというのもまた然り――。ご自身が将来どのようなポジションで活躍したいかによって、医師としての身の振り方が決まってくると言えるのです。