【開業医シリーズ】開業医の経営者としての悩み~“安住の地”わが家の選択~|ドクターズアイ.com

開業医は一軒家より賃貸住宅の方がお得?

key in hand from apartment over blue sky

現役医師の皆様のお役に立つ情報を提供する「ドクターズアイ.com」が、“開業医の経営者としての悩み”についてのシリーズコラムをお届けします。第3回は開業医の住宅事情を題材にしたコラムです。一般的なイメージとして医者は閑静な住宅街の一角に大豪邸を構えている印象がありますが、実はあえて家賃を経費として計上するために、賃貸を選択している開業医も多いことをご存知でしょうか? 実は開業医の方であれば節税を意識して賃貸住宅を選択するのも一つの手なのです。

 

独立して間もない開業医は節税対策が重要

世の中にはさまざまな職業がありますが、医師はお金持ちのイメージのある職業として常にランキングの上位に位置しています。特に独立して自身の医院を経営している開業医は、世間一般的にかなり裕福な印象があります。実際に厚生労働省によって発表された平成25年度の医療経済実態調査報告によると、開業医の平均年収は約2500万円。サラリーマンの平均年収が415万円(平成26年度国税庁民間給与実態統計調査)であるだけに、イメージ通りの所得水準にあると言えるでしょう。

ただ、すべての開業医が裕福な暮らしをしているかと言えば、実はそうとも限りません。たとえば、開業直後の場合、医院の建築や、医療機器のリース、スタッフの採用など莫大なイニシャルコストの返済に追われる時期があります。開業してすぐに多くの患者さんが来てくれるとも限らないので、医院経営が軌道に乗るまではさまざまな面で切り詰める必要があるでしょう。

経営を安定させるために開業医の方がすぐに実践できる無駄な支出を省く方法としては、「節税」が挙げられます。開業医は個人事業主にあたるので、さまざまな費用を経費に計上することも可能です。たとえば出勤時に使用する車も経費として認められるケースもあります。医師の方が乗っているイメージが多いベンツなどの高級外車も実は経費で支払っているかもしれません。そして、意外にも経費としても計上できるのが「賃貸住宅の家賃」なのです。

 

賃貸住宅は業務使用部分の家賃計上が可能

開業医と言えば、都心の一等地に豪華絢爛の大豪邸を構えているイメージが強いかと思います。そういった方も実際に存在しますが、すべての開業医が裕福な暮らしをしているわけではありません。上記でも触れた通り、特に開業直後は金銭面の余裕がないケースも多いので、イメージに反して賃貸住宅に暮らす方も多数います。そして、賃貸住宅に暮らす開業医は“業務使用部分を家賃計上”している可能性が高い点に着目すべきです。

法人化していない医院の開業医は個人事業主にあたるので自宅が賃貸住宅の場合、一部を業務に使用すれば、全体に対して業務に使用している部分を必要経費とすることができます。たとえば、自宅の中で業務使用のエリアが全体の3割であれば、家賃の3割を経費として計上できるのです。家賃は固定費の中でも大きなウエイトを占めるので、その事実を認識してきちんと節税対策に取り組むか否かで財務状況が大きく変わります。

「もしかしてうちも賃貸だから節税できるかも」という方は必ず申請するようにしましょう。業務使用だからと言っても、診療を行うスペースである必要はありません。たとえば、書籍を読む書斎や、医学書や治療器具を保管する部屋でも業務使用スペースと主張することは可能です。ただ、節税のために業務使用スペースを8割などと申請すると、税務調査が入った際に証明ができないことが想定されるので、適正な範囲を経費として計上しましょう。

 

おすすめできない持ち家の費用の経費化

賃貸住宅が経費として按分可能なのであれば、「自宅が持ち家の場合も同様に経費化できるのか」という疑問が生じるかと思います。持ち家がある開業医の方も多いので、その点は気になるところですが、結論から言うとあまりおすすめできません。

なぜならば、自宅評価額の一部を減価償却することが可能ですが、居住用に使用している家屋であれば受けられる譲渡の特例や住宅ローン控除が受けられなくなる可能性があるからです。自宅の10%以下の経費割合であれば譲渡の特例や住宅ローン控除の適用はできますが、経費計上できる金額が少ないため、他の控除を受けられなくなるリスクを考えるとあまり得策とは言えないのです。

すでに節税対策を意識して、あえて賃貸住宅を選んでいる開業医の方もいるかと思いますが、無駄に支払っている税金がある場合は、見直しをして少しでも医院経営にプラスになる選択をすべきだと言えます。特に住宅は持ち家ではない限り、毎月多額の固定費がかかるだけに、家族が暮らす“安住の地”であるわが家も経営戦略を踏まえたうえで選択するようにしましょう。