【勤務医シリーズ】病院内部に属する勤務医の事情~悩みの種となる研修医教育~|ドクターズアイ.com
指導医にとって苦労が絶えない研修医教育
現役医師の皆様のお役に立つ情報を提供する「ドクターズアイ.com」が、“病院内部に属する勤務医の事情”についてのシリーズコラムをお届けします。第3回は研修医教育を題材にしたコラムです。2004年の新臨床研修制度の導入により、研修医の教育制度は以前と比べて大きく変わりました。指導医の背中を見て技術を覚えるといったかつての教育方法とは異なり、現在では指導医が前期研修医に手取り足取り指導を行う必要性があるのです。
研修医の指導にかけられる時間が少ないのが現状
業界問わず、新人教育は重要な意味を持っています。適切な教育を行うことで新人が早く業務内容を覚え、自身の判断で仕事ができる一人前になれば、周囲の業務負担も減らすこともできます。そして、新人の成長が特に望まれているのが“人の健康や命を取り扱う医療の現場”なのです。
医療界において若い世代の突き上げが求められている背景としては、“深刻な医師不足”に陥っている現状が挙げられます。OECD(経済協力開発機構)の2013年のデータによると、日本は人口1000人当たり2.3人しか医師がおらず、OECD加盟34ヶ国のなかで下から6番目に位置しています。医師不足が叫ばれている現状は、現場レベルだけではなく、国際レベルで見ても顕著であると言えるでしょう。
そのため、どの病院でも研修医の即戦力化が求められている状況ですが、医師不足によって別の問題も発生しています。それは指導医が研修医の教育に割ける時間が少ないことです。慢性的な人材難によって、医師1人が抱える仕事の量は増加の一途を辿っています。外来、回診、手術などで忙しいところに、研修医への教育が加わることで指導医のリソースはパンク寸前。医療界の未来のためにも手厚い指導は重要ですが、日々の業務に忙殺されることで研修医の教育になかなか時間を割けないというのが現状なのです。
患者さんが研修医に対して不安を抱くことも
指導医のリソース不足という大きな課題の他にも医療現場の教育には、避けては通れない問題があります。それは患者さんが研修医に対して不安を抱くということです。臨床経験がない研修医は、現場で患者さんと対面することで医者としての振る舞いや診療の手順を学んでいきます。ただ、患者さん側からすれば自分の健康は、経験豊富で安心できる医師に診てもらいたいと思うのは当然のこと。研修医を現場に立たせる場合、指導面に加えて患者さんへの配慮にも気を配る必要があります。
たとえ臨床研修病院に指定されている施設だったとしても、患者さんにとってはあまり関係ありません。研修医が対応する場合、患者さんは少なからず不安を抱いてしまうものです。もちろん病院側からの丁寧な説明があることで、研修医が対応することに納得してくれる患者さんもいます。ただ、そうした患者さんの方が珍しいと思った方がいいかもしれません。そのため大変ではありますが、何かトラブルが起こりそうになった場合は、指導医がすぐに出ていける準備を整えておく必要があります。
無理に研修医に役割を任せようとしても、患者さんは不安に感じてしまうかもしれません。そのため、任せられる役割を徐々に増やしながら、地道に現場教育を行うことが大切です。すぐに一人前になれる医師などは存在しないので、指導医が常にバックについて的確なサポートを心がけることが理想と言えます。医療の主役である患者さんの心情を汲み取りつつ、研修医の指導を行うようにしましょう。
指導に困ったら「5micro-skills」の導入を
限られたリソースの中で懸命に指導をしていたとしても、「なかなか研修医が育たない」と後進の育成に悪戦苦闘している指導医の方も少なくありません。そんな研修医教育に悩む多くの指導医の方におすすめしたい効率的な指導法が、「5micro-skills」です。
「5micro-skills」は米国で発案された短時間で効果的なフィードバックを行うための指導法であり、日本の臨床教育の現場でも導入されています。ポイントは指導医の指示をただこなすだけでなく、自らの考えで行動できる医師を育てるためのメソッドであること。そのため、研修医の思考過程を明らかにしたうえで、効果的な指導を行うことを目的としています。具体的な流れとしては、以下の5つのステップで指導を行います。
「5micro-skills」は研修医指導において有効な一つ方法。端的にピンポイントで指導できるため、研修医の指導を効率的に行いたいと考えている指導医の方にはおすすめです。ただ、もっとも重要なことは指導医の方が熱意を持って研修医の指導に当たることだと言えます。指導医が“医療界の未来のために”という大きな志を持ち、「5micro-skills」のようなロジカルな指導法を駆使することで、研修医も自ずと医療現場で働く“自信と実力”をつけていくはずです。