【開業医企画】医者だけど借金まみれ?経営難も珍しくない開業医の現在地~|ドクターズアイ.com

必ずしも成立しない「医者=金持ち」の図式

現役医師の皆様のお役に立つ情報を提供する「ドクターズアイ.com」が、開業医に関連したトピックスをコラム形式でお届けします。第4回の今回は開業医の経営難を題材にしたコラムです。多くの方が医者に対して「お金持ち」というイメージを抱いていると思います。テレビドラマなどの影響もあってか医者は豪邸に住み、高級車を乗り回しているといったイメージを持つ方は少なくありません。しかし、経営難に陥って閉院に追い込まれる医院も多く存在し、“医者であっても儲からない”ことも何ら不思議なことではないのです。

 

思った以上に廃業に追い込まれている医療機関

厚生労働省が行っている医療経済実態調査によると、毎年新規開設する医療機関と廃業する医療機関はほぼ同数のようです。また、東京商工リサーチが2015年12月に発表した「病院・診療所」、「調剤薬局」の業績動向調査によると、病院・診療所の赤字率は32.3%だったという結果が出ています。このリサーチ内容から見ても医療機関の廃業は決して少ない数字ではなく、閉院は免れたとしても赤字で経営が苦しい医療機関も3割以上あることがわかります。

赤字となっている医療機関を細かく分析してみますと、一般病院、有床診療所は2期連続で増収となっているのに対し、無床診療所は減収となっています。つまり規模の小さい医療機関ほど経営が厳しくなっているということです。そのため、医師不足が叫ばれ人材難の医療業界において、経営難の小さな医院が優秀なスタッフを雇用することは現実的に厳しいと言えるでしょう。結果としてさらに患者が減り赤字となり廃業に追い込まれるという悪循環が続く可能性は高いと言えます。

「開業医は稼げる」とあぐらをかいて、何の対策もせずにいるとすぐに経営難に陥ってしまいます。医療業界であれば安泰とも言いきれないだけに、常に経営努力を怠らないことが大切です。そのため、開業医には集患数を増やしたり、無駄なコストを削減したりするなど地道に行動し続けることで、健全な医院経営を目指すことが求められます。

 

節税対策などで地道に固定費を抑えることも大切

税理士にすべて任せるべき?開業医の税金対策について  のコラムでもご紹介しましたが、医院経営においては売上を作ることと同様に、節税などで固定費を下げて出費を抑えることが大切です。開業医の場合はスタッフの数も限られているので、仮に患者が増えたとしてもケアできる数は限られています。つまり急激な売上アップは見込めないのです。入ってくるものに限りがあるのであれば、出るものを最小限に抑えることが赤字を減らすための第一歩となります。

しかし、そもそもスタッフが少ない開業医において、院長が節税対策に時間を割かれてしまうと診療にかける時間が減少してしまいます。そうすると当然、医院全体の売上が落ち込んでしまうでしょう。また、最適な節税を行うには専門な知識も必要となるためその勉強も必要であり、一人で行うことは非常に困難です。節税対策に関しては税理士など専門家の力を借り、院長は集患のための経営努力や患者のケアに集中することが望ましいといえます。

医院経営の基盤をしっかり整えることで利益を創出し、余裕を持ったうえで税理士に依頼することで固定費を削減する。そうした地道な活動に徹して好循環を生むことで、医院の経営状態も徐々に右肩上がりに傾いていくでしょう。

 

集患のためには常に経営努力が必要

医院経営にいいサイクルが生まれたら、その追い風に乗ってさらなる発展のための経営戦略を練ることが大切です。スタッフの雇用、新たな設備の導入などに投資を行い、より多くの患者さんを受け入れることができる体制を築くことが重要になります。体制が整ったら、いよいよ本格的な集患のタームに入ります。折り込みチラシや広告、クリニックカードはもちろん、最近ではWebの活用で集患に成功している医療機関も増えています。自院のサイトやSNSを効果的に活用することはもはや集患のための必須項目と言えるでしょう。

そして、当然ながら医院経営は集患できればそれで完了ではなく、来院していただいた患者さんに継続的に通ってもらうようにすることが大切です。スタッフを教育して明るい対応を徹底することはもちろんのこと、内部の連携を密にすることで診療後の待ち時間の短縮を実現させるなど、来院された患者さん満足していただける施策を行いましょう。そうすることで、患者さん間で医院に関するいい印象が生まれ、口コミで新たな患者さんを呼んでくれるでしょう。

冒頭でも触れたように今は経営難で廃業に追い込まれる医療機関は珍しくはなくなっています。集患のための経営努力は常に継続する必要があり、ちょっと患者さんが増えたからといってそうした改革の歩みを止めてはいけません。常に現状以上を目指して努力を続けることが、経営難に陥らないための最善の方法と言えるのです。