患者のミカタ“かかりつけ医”としての地位を築く方法とは?|ドクターズアイ.com
医師にとってもっとも大切なのは信頼です
現役医師の皆様のお役に立つ情報を提供する「ドクターズアイ.com」が、開業医に関連したトピックスをコラム形式でお届けします。病気の症状を改善に導く医師は、患者さんにとっては非常に尊い存在でもあります。“かかりつけ医”や“ホームドクター”など信頼を寄せる医者に対する呼称が数多くあることがその事実を雄弁に物語っています。ただ、その一方で“ヤブ医者”や“タケノコ医者”など揶揄する表現も同様に多く存在します。地域の方に頼りにされる真っ当な医師になるためには、どのような取り組みが必要なのでしょうか? 医師という職業の本質に迫ります。
7割以上の人がかかりつけ医は必要だと回答
日本医師会総合政策研究機構が2015年1月に発表した「第5回日本の医療に関する意識調査」によると、53.7%の方がかかりつけ医が居ると回答。そして、かかりつけ医は居ないけど、居ると良いと思う人は17.8%という数値になりました。つまり、全体の71.5%はかかりつけ医が必要だと考えていると言い換えることができます。これは多くの方が信頼できる医師の存在を求めているということの表れなのでしょう。
患者さんは医師に自分の命や健康を預けるわけなので、万が一の事態があった時に自分の身体のことを一番分かってくれている人に治療、もしくはアドバイスをしてほしいと思うのはある意味当然ことです。7割以上の人は、かかりつけ医がいることでそうした不安を少なからず解消できると考えているのでしょう。
一方で医師の立場からこの結果を見ると、かかりつけ医が必要だと思うのにいない人が17.8%、かかりつけ医がいないという人は46.3%もいるということになります。さまざまな理由はあるはずですが、その中には“信頼できる医師がいない”といった理由も考えられます。医師としての信頼感がなければ、何かあった時に相談しようと思ってもらえません。かかりつけ医になるためには、まず“患者さんに信頼される医師”にならなければならないのです。
信頼されない医師はもはや“ヤブ医者”扱い
医師において信頼性というのはもっとも重要な要素ですが、その要素を満たしていない“信頼されない医師”にはどのような特徴があるのでしょうか? 医師としても技術が拙く未熟な場合は言うまでもありませんが、それ以前に患者さんに対して真摯に向き合う姿勢が非常に重要となります。つまり、医師としてのスタンスやマインドの面が信頼されるかどうかを大きく左右するのです。
病院へやってくる人は、身体や心に少なくない不安を抱えています。そうした心身ともに“弱っている方”に対して同じ目線で、分かりやすい言葉で現在の状況と今後の対応方法についてしっかり説明ができなければ、患者さんから信頼してもらえません。なぜならケガや病気の症状と同様に重要な、“患者さんの不安”をまったく解消していないからです。
不安を解消できなければ、患者さんは仮に病気が治ったとしても100%安心することはできません。「病気がよくなったのかわからないから、他の医者に相談しないと不安」という状況に陥ってしまうとしたら、それは医師の行いとして失格です。不安を煽っただけの結果になると、患者さんからはヤブ医者のレッテルを貼られかねません。患者さんに信頼してもらうには、相手の言葉を反復するミラーリング話法などを活用し、気持ちを「受け止めてもらえた」という印象を持ってもらうことが重要です。見当違いな質問や不安を口にする患者さんに対しても、一旦は相手の意見を受け止めることを意識しましょう。
心も身体も元気にすることが医師の務め
上述した調査によると、かかりつけ医に対する希望としてもっとも多かったのは、「必要な時はすぐに専門医に紹介してほしい」という回答でした。そして、「患者情報を紹介先に適時適切に提供する」が次に続いています。この結果は、患者さんがかかりつけ医を信頼しているからこそ、専門外であっても何かあった時には真っ先に相談に行く傾向にあることを示しています。
このことからも、かかりつけ医の存在はケガや病気など単に悪いところを治すのではなく、心や身体に何かしらの不調があった際に真っ先に相談できる存在であることがわかります。仮にその症状を治せなかったとしても、まずは「異常について話せる」「辛さについてわかってもらえる」というだけでも、精神的な負担はだいぶ軽減できるでしょう。患者さんの不安を受け止め、その解消のために動くことができることがかかりつけ医としての信頼をさらに上げるためのポイントなのです。
医師として患者さんの信頼を勝ち得るためには、悪い箇所を治すことはもちろん、それにプラスして心の支えとなってあげることが重要となります。それは医師の技量ではなく、普段の心がけによって信頼関係の積み重ねによって築き上げることができます。患者さんに対して真摯に向き合うことは決して簡単なことではありませんが、技術を必要とするような難しいことでもありません。医師として誠心誠意を尽くすことを常に心がければ、自ずと患者さんからの見られ方も変わってくるはずです。