開業医の経営者としての悩み~ネット上診断・相談の是非~|ドクターズアイ.com
インターネット上で行われる病気の診断・相談
現役医師の皆様のお役に立つ情報を提供する「ドクターズアイ.com」が、“開業医の経営者としての悩み”についてのシリーズコラムをお届けします。近年、インターネット上での医師への「相談窓口」や「医療掲示板」などが増加中です。また、医師とSNSを通して直接やり取りし、簡単な診断や解説をしてもらうケースも増えています。インターネットの普及によって患者さんの情報収集の仕方も変わってきていますが、医師としてはどのようなWeb戦略を行うべきなのでしょうか? 露出の増加はブランディングにもつながりますが、果たして効果のほどは……医療のネット診断・相談の是非を問います。
SNSや相談窓口が医院戦略に求められる時代に
従来までは医師と患者さんが直接コミュニケーションを取る機会は、診断の場しかありませんでした。自身ではわからない身体の不調に対して、「病院に行く」ことが明確な解決策であり、医師と顔を合わせることによって精神面の安心も同時に得られるです。現代でも不調を抱えている方のファーストチョイスは、もちろん病院で医師の診断を受けることですが、その前に手っ取り早く自身の症状について調べる手段が台頭してきました。それがインターネットを利用した情報収集です。
現在、Web上には医療に関する膨大な情報が存在します。インターネットを駆使すれば、病名、症状、進行状況、治療法などを即座に確認できる時代になりました。ただ、情報だけを享受しても、医学的見知がなければ、病気に対して「確信」を持つことができないので、最終的には医師の診断を受ける流れがやはり一般的です。しかし、相談窓口や医療掲示板、医師が運営するSNSなどの台頭によってその流れにも少なからず変化が見られてきています。
Web上での情報を裏付ける“医学的根拠”がないために、医師のもとへと足を運んでいた方も、掲示板やSNSでのコミュニケーションで“医師のお墨付き”をいただけるようになると、病院に通う必然性は少なからず薄れます。特に軽い症状の場合は医師に診てもらわずに対処できることも増えるでしょう。体調が悪い場合にまずSNSや相談窓口を利用する方が今後も増えるのであれば、医院戦略の一つとして、インターネットによるコミュニケーション手段も取り入れていかなければならなくなるかもしれません。
ネットのやり取りだけだと少ない“客観的情報”
「ネット社会」という時代の背景から、SNSや医療掲示板による集患の必要性が今後もより高まることが想定されますが、Web上での医療相談に関しては注意しなければならない点もあります。それは、診断や解説が“主観的情報”に左右されやすいということです。インターネット上での相談や診断のやり取りは対面のコミュニケーションではないので、未受診の方の場合、患者さん側からの情報のみで総合的に判断するしか術がありません。判断材料に乏しいため、一人ひとりの方への正確な診断というよりは、症状に対する一般的な情報提供に終始してしまうケースが多くなるのです。
メドピア株式会社が運営する医師のコミュニティサイト「MedPeer」(https://medpeer.jp/)による医師を対象とした「外来以外で医療相談を受け付けているか」についての調査によると、「電話やメールでは誤解が生じる」「時間的な余裕がない」「細かいニュアンスがやり取りできない」といった理由から全体の72%の医師が「外来診療にのみ応じている」と回答。Web上での相談やメール相談受付を実際に導入している医師は6%に留まるという結果となっています。
上記のように外来以外での医療相談は、医師自身の目で診断するという“客観的情報”≒“医学的根拠”が欠落した状況での判断ということであり、否定的な考えを持つ医師が多いことも容易に推測できます。また、患者さん側もせっかく相談したにもかかわらず、一般的で曖昧な回答しか得られないということになれば、その医師や病院に不満や不信感を抱きかねません。つまり、一度も来院したことがない方に対して、Web上で正確な診断をすることは未だに課題があるというのが現状なのです。
Webによる集患が向いている人とそうでない人とは
SNSや相談窓口などWeb上で医療相談をすることには、前述したように良し悪しがあります。今後のWeb戦略を見据えるうえで、今一度メリット・デメリットについて整理してみましょう。
Web上で医療相談をするには上記のような特徴があります。その内容を踏まえて、相談窓口や医療掲示板、SNSなどを利用して医療相談をすべき人とそうでない人は以下になります。
SNSや自院サイト以外の相談窓口や医療掲示板で相談を受けるのはWeb戦略としては有効な手段であることは間違いありません。ただ、絶対に採用すべきということではなく、本人の意向や目的を踏まえたうえでうまい活用をすることが大切です。集患増加を目指すのであれば、自院に合ったPR方法をまずは模索することがまず第一歩となります。他院のWeb戦略に特にとらわれることなく、自分たちの医療における考えやポリシーをいかに貫いた告知ができるかを判断基準とするべきでしょう。